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風の大陸 第2部 精霊の歌 竹河 聖 --2

風の大陸〈第2部〉精霊の歌

風の大陸〈第2部〉精霊の歌

  • 作者: 竹河 聖
  • 出版社/メーカー: 富士見書房
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 文庫


第2話 黄金の死者の都
ティーエは死者と生者の区別を基本的にしない。
そんな始まり方のお話です。

砂漠の中、次の井戸を探しながら旅をする3人は当然のことながら十分な水など持っていない。
中でもラクシは基礎代謝が激しいのが、落ち着きがないのか、他の2人よりも水を消費していた。

人の声が聞こえる、とティーエが言った時、彼女がその信憑性を疑わずに飛びつくのは解らないでも無いところですが、そんなに都合の良い話はありません。
ティーエしか聞かなかった訳で、普通であれば間違いなく幻聴です。
しかし、普段から人とは違う物を聞くティーエの事なのでラクシは疑いませんでした。
人とは違う物を聞くティーエがこう言うのだから、と自分の耳を頼りにするボイスの姿勢と対照的です。

町についたのは夜だったが、町には明かり一つ灯されていなかった。

町が普通の町でないことが解り怒り出すラクシにティーエが逆切れ、する様なファンフィクションを読んでみたいと思わなくもありませんが、ティーエは生きてる人と死んでる人の声を間違えた事をあっさり認め、ボイスは「水はあるかもしれないじゃないか」と宥め、ラクシの機嫌はあっさり直ります。

町は霊に満ち溢れていた。
ティーエはそれを墓の様、と表現しする。
水場を見つけたラクシは水受けになる器を探しに民家に入る。
悲鳴をあげたラクシを追って民家に入ったティーエとボイスは椅子に座る影を見つける。
民家の中には人がいた。
だが、彼らは全く動かなかったのだ。
明かりをつけると彼らが正装で仮面を付けている事が解ったが、仮面を取ると、ラクシは、また悲鳴をあげる。
住人はミイラだった。

ティーエが説明する。町は死者のために作られた墓だ。
豊かで幸せだった住人は死後の世界を夢見て都市を作ったという。

つまりは、至ってしまった訳ですかね?
生きる欲求と言うのは足りないものを埋めていく為のもので、欠けたピースが無くなったら生きることの方向性がなくなります。
進化の最終形が滅びと言われる事のある理由です。
町の人達は満足しきってしまいました。
「時よ止れ。お前は美しい」と言う奴ですね。
町の人達は死で時間を止めてしまったわけです。幸せなまま。
永遠の幸せが死、なんてどこかのおばかさんの殺人の動機みたいで嫌ですが、
町全体の総意としてそういう事になったとしたら、それはそれで一つの価値観になります。
特に、それで本当に幸せになったのを見ているティーエ等は否定しないでしょう。
元々ティーエは誰も何も否定しないキャラですが。

とにかく、幸せに死んでいる人たちの生活をかき乱さない様に朝になったら水だけ分けてもらって出て行こう決めた3人は今度は現実の音を聞く。ラクシもボイスにも聞こえる音を立てながら墓荒し達が町に入ってきた。
ティーエは彼らが財宝に手を付ければ町を守る呪いに自分達も襲われる可能性があると言う。
呪いは侵入者を撃退するが狙って入った者と間違って入ってしまった者を区別しない可能性がある、と。
ティーエ達は神殿の一つに隠れるが、ラクシが罠を発動させてしまう。
落とし穴だ。

呪いがあって、落とし穴みたいな罠もあると言うのは中々性格の悪い凝った設計です。
呪いなんかかけて欲しくありませんが、某元建築士さんにも凝った設計と言うのをして欲しかった物です。
・・・無理ですか?施工する建築会社も建築主もマンションの買い手すらも安く安く、なんて言っていたら・・・?

落とし穴に落ちたラクシの元にボイスを送ってからティーエは呪いと交渉を始めた。
神殿は呪いの本体だった。
墓荒し達も神殿を見つけティーエがいるのを見て驚く。
そしてティーエを縛って宝捜しを始め、呪いが発動する。

ティーエは発動した呪いを説得し、ボイスとラクシを助け出すが、墓荒し達は全滅する。
3人は地下を走る運河を進んで町を出る。死者の町の住人が生きていた頃に済んでいた所にたどり着く。
そこは、人の住まなくなった町そうなる様に、微かな残骸を残した廃墟と化していた。


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